私の好きな詩人 第193回 ―吉野弘―  浅野 大輝 - わたしの好きな詩人

吉野弘の詩に出会ったのは、高校時代のことだった。確か英語を習い始めて間もない頃だ。或る夏の宵。父と一緒に寺の境内を歩いてゆくと青い夕靄の奥から浮き出るように白い女がこちらへやってくる。物憂げにゆっくりと。女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は女の腹から眼を離さなかった。頭を下にした胎児の柔…