村上春樹のある種の傾向――『騎士団長殺し』にみる反復と逸脱の構造(1)

いい作家はいつも同じ場所を、質と大きさの違う槌で叩く。音が変る。釘を大切にする。同じ槌ばかりだと結局釘の頭を潰すだけで少しも打込めない。ただうつろな音がするばかりだ。 ジャン・コクトー「職業の秘密」*1 「どう、十分硬くなったかしら?」と彼女は尋ねた。 「金槌みたいに」と私は言った。 「釘だって打てる…