苦笑いの「お姫様」 内田麻理香 - 日本経済新聞

薄暗い部屋で、ひたすら絵本を読んでいた。私が幼稚園に通っていたころ、自宅は増築工事の最中だった。できたての、木の香りや接着剤の臭いで混乱している部屋の中にいるのが好きだった。未完成の部屋なので、電灯はない。灯(あか)りのないところで、こっそりと本を持ち込み、ひたすら読むのが私の楽しみだった。お気に…