『瞬殺猿姫(45) 差し向かいになる二人、猿姫と神戸下総守』

猿姫(さるひめ)は妙な気配を感じて、振り返った。 畦道に、編み笠を被り、脚絆を履いた武士が立ってこちらを見ている。 猿姫は農家の夫婦と共に鍬で畑の土を掘り返し、耕していたところだ。 春の気配が迫った、しかしまだ底冷えの残る朝。 尾張の織田の刺客か、亀山の関家の刺客か。 一瞬緊張したが、相手の武士は猿姫の…