超短編「ちるちるみちる」

降るたびにあたたかくなる雨のなか、そのひとは花びらを拾っていた。 つい一週間ほど前までうつくしく咲いていた、桜の花びらが散らばっている。風に吹かれて雨に打たれてひとの足に踏みにじられて、今ではその影も形もなくなって、ただ汚らしいピンクと茶と黒が水たまりに飲み込まれぐるぐるしている。そのなかから、白い…