【日刊 太宰治全小説】#19「ロマネスク」嘘の三郎(『晩年』)

【冒頭】むかし江戸深川に原宮黄村という男やもめの学者がいた。支那(しな)の宗教にくわしかった。一子があり、三郎と呼ばれた。ひとり息子なのに三郎と名づけるとは流石(さすが)に学者らしくひねったものだと近所の取沙汰(とりざた)であった。 【結句】嘘の三郎の嘘の火焔(かえん)はこのへんからその極点に達した。私たち…