【日刊 太宰治全小説】#7「地球図」(『晩年』)

【冒頭】ヨワン榎(えのき)は伴天連(バテレン)ヨワン・バッティスタ・シロオテの墓標である。切支丹(キリシタン)屋敷の裏門をくぐってすぐ右手にそれがあった。いまから二百年ほどむかしに、シロオテはこの切支丹屋敷の牢の中で死んだ。彼のしかばねは、屋敷の庭の片隅にうずめられ、ひとりの風流な奉行がそこに一本の榎を…