朝汀

黒曜石の断面のような水面が重く横たわっていた。その先端は鋭く光って、淡く煙った夜空を拒んでいるみたいに切り立つ水平線。吐く息は濁った黒になる冬の夜、 しきりに鳴る電話の着信を切った。「一五九二〇〇〇〇、」 首都高速湾岸線、高架のへりを歩く浅未のお尻でスカートが浮き沈みをする。マニキュアの光沢が時速百…