愛は、踏み越える ー ドストエフスキー『罪と罰』24

『罪と罰』の冒頭に、ラスコーリニコフの下宿のある建物の門口から高利貸の老婆の家までは「きっかり七百三十歩」あると記されている。(略)つまり、ここでのドストエフスキーはほとんど瑣末なまでの「リアリズム」にこだわっているわけである。 ところが、すでに第一部第一章の文脈の中でも、この距離をほかでもない「七…