あっぱんまー

暖かい日差しが私たちを照らしていた。眼前の麦わら帽子は輝きを放ち、それをあご紐でとめた娘は、私の膝の上で真っ直ぐにステージを見つめていた。 ステージ上のおねぇさんが会場に向かって合図を送ると、娘は口元に両手をもっていき、少し遠慮がちに声をふりしぼった。 「あっぱんまー」 その声を聞きつけたに違いない。…