思い出は匂いに宿る

「地下鉄の匂いが好きだ。」 ふと、思い出した。 正確には地下鉄に降りる入口に差し掛かったとき、地下から吹き上げる風とともに香る匂い。それも地元を走る南北線の。 表現が難しいのだけど、他人の家の匂いのように独特な、それでいてカビ臭いとは違う、建造物特有の無機質な成分が混ざりあった匂い。 人によっては良い…