『出発は遂に訪れず』島尾敏雄

「日の果て」 「です・ます」の丁寧語を用いているので、牧歌的な印象を受けた。 ガジュマルの生息する島に、軍人たちがやってくる。彼らは洞窟に魚雷艇を隠し、特攻の命令を待つ。もっともおもしろい場面は、中尉が崩れた土嚢の修理を命ずるが、部下に陰口をたたかれ、泣く泣く自分ひとりで作業をするところである。 中尉…