短篇小説「命に別条」

ある朝、男が工事現場の脇を歩いていると頭上から大量の鉄骨が降臨、その頭部を直撃するという事故が起きた。だが幸運なことに、この日初陣を飾った一張羅のカツラこそ飛び立ったものの、男の命に別条はなかった。別条がないというのは良いことである。 クロスした鉄骨の合間からひょっこり顔を出した男はまるで別人の様相…