#328 南大門の鹿

いつも どこか なにかを置き忘れてきた気がして、 わたしは昔、 あの港で、 鎖につながれたまま 奴隷船に乗って櫓を持った。 潮風、燃えさかる太陽、波の向こうの蜃気楼、 指の皮は膨れてすぐに破れ、 とめどもなく吹き出す血と、 破れた背中にも痛みすら感じなくなった頃、 目の前の黒点が広がった。 ただ、 ポルトガルの…