関東大震災と「新巻の鮭」

仏文学者の田辺貞之助(たなべ・ていのすけ)氏は、自伝的随筆集『女木川界隈』の中で、生まれ育った故郷である砂村(現在の東京都江東区北砂町)で体験したさまざまな出来事を書き記している。[1] まえがき 江東地区を縦横にはしっていた江戸時代の運河も、いまは大方うめられて、残っているものはあまり多くない。そのひ…