春秋 - 日本経済新聞

20年前。独立間もないボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボは、激しい民族紛争の焦点となっていた。砲弾や銃弾が飛び交い、街のあちこちが破壊される混乱のなか、市内の図書館で保管されていた1冊の本が、行方不明になった。「サラエボ・ハガダー」という。▼ハガダーとはユダヤ教徒が過越(すぎこし)の祭りで読む冊子…