東山千栄子 品性がかもす存在感 - 日本経済新聞
小津安二郎監督の「東京物語」は、筋書きで表せば、年老いた夫婦が息子たちを訪ねて上京する、それだけの話なのだ。が、私は二十代の頃この作品をはじめて観て号泣した。人物たちがしかと生きていたから、細かな描写が胸に迫ったのだろう。この映画で老夫婦の妻を演じていたのが東山千栄子である。台詞は多くない。ただに…