#3 今はまだない | 七尾百合子のミステリな日常 - patoの小説シリーズ - pixiv

1 事務所の階段を下り、光の下へ一歩踏み出すと、そこは夏色の世界だった。 耳に飛び込んでくる蝉の合唱。強烈な日差しとアスファルトの照り返し。道行く人々の額に浮かぶ汗。熱を帯びた空気が冷房で冷えた肌を焼く。私はその温度差に驚いて体をぶるる、と震わせた。 私が暑さのあまりに忘我してい...