連載小説「あの夏の向こうに」第4話

小説と詩の創作と文学エセー 信一が、交通事故で足と腕の骨を折った老人の手伝いで、漁に出るようになってから半年が過ぎた。 朝、五時に起きて六時前には船を出した。皮膚に七十年分の潮が染み込んだ老人は松葉杖で必ず先に来ていた。 大通りから階段で五段降りると、港の船着き場だった。老人はその階段の上で毎朝信一を…