連載小説「あの夏の向こうに」第8話  by古荘 英雄

小説と詩の創作と文学エセー 翌朝、麻美が来るまでに家主への挨拶を済ませようと、柏木は部屋を出た。 家主の住む母屋までの二百メートルほどを、のんびりと歩いた。 スーツ姿でネクタイも締めて、ズボンのポケットに手を入れて、柏木はその道をゆっくり進んだ。今日のネクタイは地味だが、いつもシャツとスーツに対して目…