似顔絵師(1)

この上ないくらい爽やかな秋晴れだけど、昭男は、どうも今日は気乗りがしない。「煙草、吸うよ?」 一本取り出し、運転席の清次に見せて聞く。「構わないよ」 清次は答えると、助手席側のウィンドウを少し開けた。冷たい風が隙間から流れ込んできて、昭男の髪を乱した。昭男が吹いた煙はたちまち窓からの風に飲み込まれ、…