「字のない葉書」 向田 邦子  - 民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

「字のない葉書」向田邦子家庭画報1976.7「眠る盃」所載死んだ父は筆まめな人であった。私が女学校一年で初めて親元を離れた時も、三日にあげず手紙をよこした。当時保険会社の支店長をしていたが、一点一画もおろそかにしない大ぶりの筆で、「向田邦子殿」と書かれた表書を初めて見た時は、ひどくびっくりした。父が娘宛…