ある夏のはじめに

眠れない夜が明けて、ようやく回ってきた酒でぼんやりした頭に、ジリジリと耳障りなあの声が届いた。 今年はじめての蝉の声を聞いた。もしかしたら寝ていて気がつかなかっただけで、すでに蝉が鳴き出す時期になっていたのかもしれない。だが、そんなことどうだっていい。 なんだ、もうこんな季節になってしまったのか。お…