セピア色の傘立て 002『セピア色の傘立て』

彼が飛び出していった玄関には、夕方から降り続く雨の音と、一本の傘が残されていた。 今頃彼はずぶ濡れで、坂道の多いこの小さな街を彷徨っていることだろう。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 事件があったあの日から、彼と私の時計はくるくる狂い始めた。 幼い頃からずっと二人で、どんな障壁だって乗り越え…