香辛寮の人々 2-5 「シンゾー・エクリチュール」

フェンネルは共同の居間で新聞を読んでいる。両肘をテーブルにつけ、片手にコーヒー。居間には彼しかいない。 業だな、と感じる。昨今のウィルス報道のことだ。 報道はニュースをなんでもかんでも伝えるが、その姿勢はマスコミに必然の他力本願だ。その言葉を浴びるほど受け取れば、その人間が扱う言葉にも同じ傾向が現れ…