『この地上において私たちを満足させるもの』乙川優三郎著

深い感動と余韻に包まれて本を閉じた。物は増やさない、本も増やさないと思っているのに、この本はぜひ蔵書に加えたい気がする。 主人公は高橋光洋。本名はミツヒロであるが、親しくなった人は愛情を込めてコウヨウと呼ぶ。実家は東京の下町で小さな食堂を営んでいたが、戦争で千葉に疎開し、借り物の畑地を耕し細々と暮ら…