冨樫義博論➁――善悪の相対化の先にあるものあるいは部族主義の克服について

はじめに 以前の記事で筆者は➀「人間と妖怪という二項対立が冨樫作品を貫くテーマである」と書いた。また、その中で➁「人間の持つ善悪の基準、より大きくは価値体系そのものが相対化され、揺さぶられていく点が冨樫作品の特徴である」とも書いた。これらは間違いではないが、今回はより精確にこの問題を捉えてみたい。すな…