感想『夜の果てへの旅 上』セリーヌ著〜最低が最高になる不思議。愛すべき愚痴の天才セリーヌの傑作長編小説。

悲劇的ピエロ気質でうっかり戦争に参加したことから、果てのない地獄を遍歴することになるバルダミュ。 彼の「語り」で物語は綴られる。戦争、放浪、病気、失恋。バルダミュの遍歴はまるで血の巡りの悪いオデュッセウスよろしく辛酸を嘗め尽くす。ところが不思議なことに、本書の印象はどちらかと言えば明るい。辛くなる部…