【通りすがりの怪談】怪其之八十四 ~声~

怪談 ~声~ 会社の資料室は、いつも湿っぽい空気が漂っていた。紙の匂いに混じって、どこか鉄錆のような匂いがするのは気のせいだろうか。中谷由佳は、今日もそこで一人ファイルを整理していた。理由は簡単。そこなら、人の『声』が少ないからだ。彼女は他人の心が読める。ただし、読もうとしなくても、他人の強い感情が…