小説: わんぐっどてぃんぐ 第一部 戦中編 第八章 帰郷-終

権太は故郷の風景は今頃、田植えを待ちきれず耕された豊かな土の香が風にのり、見事な桜が咲いた見慣れた景色を想像していた。ひときわ大きな屋根に、太陽を受け鈍く光る瓦。何度も夢に見た屋敷が見えるはずだ。 鳶だけは変わらず早春の雲が多い空に羽をひろげて、悠然と飛んで行く。 権太は、足をひきずるように田舎道を…