貝殻のうえをぬけてゆくひとりは、もうひとりは(実相寺昭雄監督作品 曼陀羅を観て)

寄せる内声に寄せる分れ かえす外声にかえす別れ 吹きおくる水の行方のままに ほころびた色層を流し さざなみの寝言を拾う 惟うことは見られることと重なり まなじりを染めあげる発端のない時間に かすかな悦楽がきざす 陽に焼け汗ばんだ半身に 真砂の騒擾はまばゆく 上体をおこすと 他者の尿のにおいが 掘りかえされた砂…