イタリア眼鏡は夜目が利く

一 廊下越しに足音が聞こえる。ぱたぱた、ぺたぺた、そしてカツ、カツ。帰って来たな、と彼は思う。「夜更かししないで、早く寝るのよ。あなたたち、明日も遠征でしょう」 はーい、と二人分の声。かさ(・・)をかけられてもまばゆい、南の太陽。宵の静けさにも構わず駆けて行った。彼は眼鏡を拭き、椅子に掛け直す。「ふ…