小説・海のなか(5)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 閑散とした駅を後にして、気がつくとわたしは歩き出していた。その感覚は自ら歩いているというより、誰かに導かれて、という感じだった。考えなくても勝手に身体が動いていく。未知の感覚に全神経が集中していた。心地よさがいつのまにか胸を満たしている。こんなふうにつ…