小説・海のなか(12)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 目を細めて黒く染まった海を見つめていると、夜風が渡る気配がした。夜があたしを呼んでいる。水平線の向こうでは、夕日の名残が溶けて無くなろうとしていた。夜と昼のあわい。空は夜にもなりきれず星を煌めかせたまま一方は白み、また一方は濃く陰りはじめる。この時間帯が一…