「言葉」テーマの最後に。定義や名づけがパワーを持つという話(夢枕獏「陰陽師」)

「うむ。この世で一番短い呪とは、名だ」 「名?」 「うん」 晴明がうなずいた。 「おまえの晴明とか、おれの博雅とかの名か」 「そうだ。山とか、海とか、樹とか、草とか、虫とか、そういう名も呪のひとつだな」 「わからぬ」 「呪とはな、ようするに、ものを縛ることよ」 「たとえば、博雅というおぬしの名だ。おぬしも…