カズオ・イシグロ『浮世の画家』

高名な画家(だった)「小野益次」の1948年からの2年間と戦前期の回想。その時代、多くの画家が描いたような絵を彼も描いた。がために画家「だった」状況になっている。彼を指弾する小説ではない(もちろん、擁護もしない)。そうで「ある」彼の心の揺れのありのままが書き込まれた全306ページだった。後半になって小野の…