短編小説「オレオレ本気」|カエサル

「オレオレ! 俺だよ! 母さん! 大変だ!」  電話口の向こうで冷や汗をかいているのがありありとわかるほど、声が震えていた。そしてその声は上京した息子の声に似ていた。 「祐樹(ゆうき)かい?」  土曜日の昼前、田村由美子(たむら ゆみこ)六十歳は、その男の声に思わずそう言った。そして、言ったあと「…