critique/Literature 大江健三郎『水死』をめぐって 2011年 シンポジウム「日中韓 大江小説読み比べ」(紀伊国屋サザンシアター)講演原稿|furuyatoshihiro
古谷利裕 1 『水死』という小説を読んでまず気づくのは、前作である『臈たし(ろうたし)アナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』との対照関係ではないでしょうか。どちらの作品においても、過去に性的な傷をもつ女性が中心にいて、語り手である小説家は人生の大きな危機のなかにいる。そして小説家は、父であり保護…