福永信『星座から見た地球』論「マイナス1、プラス1 『星座から見た地球』と『あっぷあっぷ』のなかを動いているもの」(1)|furuyatoshihiro

古谷利裕 1.「名」をもたないA.B.C.Dたち 『星座から見た地球』(2010年 新潮社刊)という小説は、出発と挫折のエピソードからはじまる。 滑り出しは、何かが非在から存在へと跳びだそうとでもするような強い衝動を伴った運動である。《Aはとびだした。それ以上がまんできなかったのだ》。しかし、その勢いにもかかわ…