【劇評438】野田秀樹が半世紀をかけて辿り着いた『華氏マイナス320°』——蜷川幸雄の批判への回答 八枚|長谷部浩

 科学が人間を幸福にする。十九世紀以来の進歩史観が崩壊したあげく、科学者ばかりではなく市民までが、倫理的な退歩へと転げ落ちてしまった現在を写している。それは人類の老いなのだろうか。 人類の健忘症  野田秀樹の新作『華氏マイナス320°』は、タイトルから容易に予想される焚書の物語とは異なっていた。けれ…