短編小説「鳥越岬」(44枚)|北原耕也
老母を車椅子に乗せ、押しながら坂道を駆け上がり岬の頂までたどり着いてまもなく、脳のどこかがふにゃっと崩れるようにしてふと気が抜け、気がついたら車椅子を離していた。車椅子は母を乗せたまま緩い傾斜を海側へと自走し、かと思うとふいに姿を消した。その向こうは断崖で、あわてて追いかけ崖下を覗くと母の姿はな…