母が壊れてしまったあの日から|藤永 健
・あの日 母が壊れてしまったのは、今から15年ほど前の冬の出来事だった。 当時高校二年生だった私は、北海道での修学旅行から帰宅し、うかれた気分で玄関の扉を開いた。 父は海外出張中で、大学生の姉は下宿先で過ごしており、母は一人で私の帰りを待っていた。 荷物を降ろして一息ついていると、母はいつも通りリビン…