【南方熊楠】粘る曼荼羅 ―熊楠の明治―|北河内呑兵衛
明治三十四年、和歌山県田辺。 深い森の湿り気を孕んだ風が、その男の頭髪を撫でた。 南方熊楠(みなかた・くまぐす)は、大木の根元に這いつくばり、地面と接吻せんばかりの勢いで目を凝らしていた。傍から見れば、立派な体躯をした男が全裸に近い姿で土を舐めているのだから、通りがかった村人が悲鳴を上げて逃げ出すの…