【浮田幸吉】翼、空を食らわん|北河内呑兵衛
「馬鹿め、空は飛べるのだ」 備前岡山、旭川の河原。暮れなずむ空を見上げ、幸吉は独りごちた。手には、竹の骨組みに紙を貼り、柿渋を塗りたくった奇妙な「羽」が握られている。 表具師という商売は、紙と糊の性質を知り尽くす仕事だ。風をどう受け、どう逃がすか。障子を張り替える日常のなかで、幸吉の目は常に、頭上…