【中浜万次郎】蒼海に手を伸ばす|北河内呑兵衛

天保十二年、初夏。 土佐の足摺岬から遥か南、絶海の孤島「鳥島」の岩場に、十四歳の万次郎はいた。 目の前に広がるのは、どこまでも残酷に透き通った太平洋の青だ。仲間五人と漂着してから百四十余日。雨水を啜り、アホウドリの肉を食らい、ただ死を待つだけの日々。足元に転がる貝殻のように、自分たちの命もまた、乾き…