【真田信繁】九度山、再起の暁|北河内呑兵衛
慶長十九年、十月。紀伊国、九度山の朝は冷え冷えとしていた。 真田信繁は、縁側に座り、自分の掌を見つめていた。かつて上田城の城壁を血で染め、徳川の大軍を翻弄した若き日の手ではない。節くれ立ち、随所に細かな傷が刻まれたその手は、この十四年、槍を振るう代わりに真田紐を編み、土を耕し、酒を酌み交わすために…