【短編小説】雨粒|めち
手の甲にポツリと感じて、見上げた頬に雨粒が落ちた。 みるみるうちにアスファルトに黒い染みが広がり、ザアッと押し寄せる雨音から逃げ込んだ理髪店の軒先には、先客がいた。 胸にトートバッグを抱えたその人は、憂鬱な横顔で空を見上げていた。 予報はにわか雨だったが、いつの間にか、街の稜線が切り取る空に暗い雲が垂…