『親切な機械』を読む|安永透

自我の抹殺  三島の『親切な機械』は、実際に起きた事件を基にした短編小説で、最後に、猪口という京大生が、同じく京大の女子学生を殺害する。理由は、結婚の申し込みを断られたからであった。猪口はその直前に、友人で主人公の木山に次のように語る(決定版17,619~620ページ)。 「俺は俺自身のため、社会のために…