弓の軌跡は春へとつづく|雨伽詩音/嘉村詩穂

まだ、遠い汽笛の声が耳の奥に残っている。航海の果てにさまよって、どこにも行きつかないまま別離を経たおまえの姿を見出そうとしても、ぼんやりとかすみがかって、その面影はいくつもの人影に重なって判然としない。そのうちに亡父の静かなまなざしがあったことを受け止めかねて、彼の遺したコントラバスが船室の奥に残…