罪業の門を叩いてのちに|雨伽詩音/嘉村詩穂

癒えない痛みばかりがわたしにとってのはじめの証だったと記すにはまだ早すぎる。疼痛を至るところに抱いた体を縮めて紅茶碗を持つ指先もまた、傷つき果てている。治癒には程遠い道のりをどのように歩んできたのだったか、その迂回路にあったはずの歌声ももう忘れ果ててここまでたどり着いたのだった。ひとりきり、衣を擦…